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| 会場を小まめに歩きアドバイスをする渡辺教諭(中央)。参加者ははさみ片手に熱心に新聞を読む=宮城県山元町・徳本寺 |
NIEを学校から家庭・地域へと広めよう、という機運が高まっている。その最先端を行く実践として注目されているのが仙台市立五橋中の渡辺裕子教諭(55)=家庭科=の「NIEキャラバン」。賛同する教師ら四人と今春結成したばかりで、学校を飛び出し、市の集会施設などで巡回講座を行っている。新聞を通して地域住民がコミュニケーションを図る場として確かな手応えを感じさせている。
*寺の本堂を会場に
十月最後の日曜日。巡回講座五回目のこの日は初めて仙台を離れ、宮城県南端の山元町へ。会場は五百六十年の歴史を持つ曹洞宗徳本寺(早坂文明住職)。広い本堂に二十人の檀家(だんか)の人たちがそろう。「老いも若きも一緒に『夢』語りSUPE(すぺ)!」と銘打った集いの始まりだ。
「皆さん、こんぬずは(こんにちは)」。渡辺教諭が話しかけ、まずは民話「頭の柿の木」を仙台弁で一人語り。場が和むと「これから新聞を使って、皆さんの気持ちを表現してもらいます」。
参加者は戸惑いながらも用意された新聞を一部ずつ選んで読み始める。好きな記事が見つかると、切り抜いて紙に張り、次に印象を喜怒哀楽の文字や仙台弁の単語で表現、最後に文章にまとめて発表するという手順だ。
「難しくて分がんね」と尻込みするお年寄りには、隊員四人のうちこの日参加した仙台市内の中学校教諭木下晴子さん(43)、小学校教諭の千葉久美子さん(45)、生徒の保護者でコピーライターの工藤三千代さん(49)が文章づくりを手伝った。「純金カレンダー発売」(河北新報)という記事を選んだ志小田好治さん(83)は「年金生活者の気持ちを逆なでする、ごしゃける(腹が立つ)行為だ」と怒りを表現した。
*契機は韓国の視察
渡辺教諭とNIEのかかわりは古い。二十年ほど前、生徒の関心をつかもうと新聞を使ってみたのが始まりで、以来実践を重ね、今年一月には日本新聞教育文化財団のNIEアドバイザーに。五橋中では今年、保護者負担で全学級がそれぞれ新聞五紙を購読する活動にも奔走、実現させた。
活動を学校外に広げようと思ったのは、四年前、地域NIEに熱心な韓国を視察したのがきっかけ。昨年は一年生の親子を対象に道徳の授業を行い、ますます必要性を痛感した。「同じ記事を読み、意見交換することで、親同士の交流もぐんと深まった」からだ。
*「勉強の場ほしい」
そこで今春「NIEで向こう三軒両隣」をスローガンに親しい教師を誘ってキャラバンを結成、隊員の工藤さんは元受講生だ。今回の徳本寺での開催は、渡辺教諭の実践を新聞で知った早坂住職が協力を申し出て実現、三百軒の檀家にチラシを配ってもらった。
森千香子さん(39)は参加者の中でも若手。「森亮一と律子の娘です」と親の名前を告げて自己紹介すると「ああ、あの森さんの娘さん」という声が上がる。選んだ記事について意見を述べると、また温かい拍手。檀家同士の和やかな雰囲気の中で、新聞を介した地域の人たちの会話が弾む。
二時間の講座はあっという間に終了。参加者からは「こんなに丁寧に新聞を読んだのは初めて」「いろいろな話を聞けて知識が広がった」などの反応があった。
渡辺教諭は「講座の参加者から『NIEについて勉強する場がほしい』という声が出るまでになっている」と成果を強調。その実現へ県NIE委員会にも働きかけている最中で、活動をさらに充実させるための環境整備にも動きだしている。